NW-ZX2の4極接続について、もう少しいろいろ比較試聴してみた
NW-ZX2のイヤホンジャックは実は3極ではなく4極というのは発売前からちょこちょこ言われていた件で、うちでもCD900STやEX800STを4芯4極化して使おうっていうのを別エントリーで前にやってるわけですが(EX800ST、CD900ST)、それ以前にノーマルのつまり3芯3極のEX800STでZX2を使っていて、その再生音に違和感あるなぁ…ということで、違和感も銀座ソニービルやヨドバシ各店やソフマップやビックの各店で試聴して、こりゃもう個体差とかじゃなくて仕様かしら?ということで、もうちょっと細かく比較試聴してみると良いかも?というわけで、やってみました。
ZX2の4極の内訳はL、R、GND/L、GND/Rです。
これをイヤホン・ヘッドホンに接続するには以下の5通りを作れます。
1:LをGND/Lに落とす、RをGND/Rに落とす(普通の4極接続)
2:LをGND/Rに落とす、RをGND/Lに落とす(誤った4極接続)
3:LをGND/Lに落とす、RをGND/Lに落とす(ZX2のGND/Lのみに落とす4極接続)
4:LをGND/Rに落とす、RをGND/Rに落とす(ZX2のGND/Rのみに落とす4極接続)
5:LをGND/LとGND/Rに落とす、RをGND/LとGND/Rに落とす(一般的な3極接続)
4極4芯化したEX800STに接続できるように、以上の5個の変換ケーブルを作ってみました。
こんな感じでいかがでしょうか?
左から1、2、3、4、5のケーブルです。
これらのケーブルをZX2につないで、それぞれの結果を控えていきます。
ちなみにLとRのGND同士が導通している事実や『GNDなら差異はない』とするなら『1~4の接続では音は変わらない』はずです。
試聴曲はY.M.O.のU.Tと南沙織の17歳、さだまさしの秋桜、Jaco PastoriusのCome on,Come over・Forgotten Love、Donald FagenのThe Nightflyで行いました。
それぞれ試聴しながらメモを取っていったので、それをひとまず載せていきます。
メモ書きそのままなので結構雑で読みづらいかもですが、そこはご容赦を。
U.T.
1(LR/LR):普通…?
2(LR/RL):イントロから左右に妙に音が広がる 音像がふわふわしてつかみどころがない 低音のアタックがディレイしてるイメージの音になる(43秒あたりからのベースが顕著) 1曲通しての試聴は苦痛
3(LR/LL):普通…もしかしたら1より音像がくっきり締まっているかもしれないほどすっきりと聞ける ベースも序盤からずっとしっかり重みをもって聞こえてくる
4(LR/RR):イントロから若干の違和感あり もわっとした音像 2ほどではないが低音の実在感を得られないイメージ ときおり口腔内、舌の奥から中あたりまでに倦怠感が 1曲通しての試聴は苦痛
5(3極):普通?イメージ的には1に近いが、ときおり2のような特色もイントロの時点から聞かせる ただし2より全然まし しかし聞いていると別種の、こめかみのあたりに鈍痛のような違和感あり 2分ほどのセリフのあたりまで聞くとキツい
17才
1(LR/LR):普通?普通に聞ける
2(LR/RL):イントロから気持ち悪い ボーカルが平べったく左右にとっ散らかった印象でふわふわしてる ベースが滲んで気持ち悪い 左のタンバリン?の音が妙に左にすっ飛んでて、これまた気持ち悪い
3(LR/LL):普通 1よりすっきり聞けているかもしれない イントロから好印象 ボーカルもセンターでビシッと決まってる 違和感がなくて聞いてて楽しいのはこれかも
4(LR/RR):イントロから浮つき気味だが2よりマシ タンバリンの位置が1・2・3よりもセンターよりなイメージ…かと思えば遠ざかったり安定しない変な感じ 演奏全体にリバーブがかかってるような違和感あり
5(3極):一聴して普通な感じ? イントロは問題なし 音像的にも特に違和感なし ときおりベースが少し変に重い?というか気持ち悪い? こめかみあたりに鈍痛がくる感じ? 通しで聞けないほどではないが不意打ちで違和感がある
秋桜
1(LR/LR):普通 もともとエコーすごく効いてる曲なので違和感とか特にない 聴感上も特に問題なし
2(LR/RL):イントロからエコーの響き方が前頭の斜め上に響く感じで気持ち悪い 声がふんわり響いて安定感がない 全体的に変にソフトな印象 2コーラス目の低音が入ってくるあたりで後頭部の芯の方にぼんやりと鈍痛感ある気持ち悪さあり
3(LR/LL):普通 いわゆる一般的なプレーヤーで聞くのに近い印象 もしかしたら1より素直かもしれない印象 音像も各位置の安定感が良好
4(LR/RR):イントロから2に近い変な違和感あり 若干ボーカルの安定感がなく浮ついた、頭内定位だけど変な場所で鳴ってる感じの気持ち悪さあり 2コーラス目の違和感は2と同様で吐き気に近い感覚あり
5(3極):イントロで若干の違和感あり、頭痛の鈍痛的な? 歌が入ってくるとはじめは問題なかったがときおり2や4に近い感じの気持ち悪さあり 1分30秒以降あたりからのボーカルが中央で窮屈に収斂されてるような気持ち悪さあり しかし2や4ほどしんどさはない
Come on,Come over
1(LR/LR):特に問題なさげかと思われたが常に一定の違和感あり 主に右寄りに若干の頭痛感あり(後頭部の芯のあたり) 常に負荷がかかってるような違和感
2(LR/RL):1であった違和感が左にも広がった印象 ボーカルも楽器も安定感がなく掴みどころがなく気持ち悪い 滲んで広く聞こえているようでいてスケール感がせせこましい
3(LR/LL):普通 特に違和感なし 妙な広がりなどがなくて一番生々しく聞こえるのがこれだった
4(LR/RR):妙なディレイというか、そんなエフェクトがかった印象に聞こえてしんどい
5(3極):特に違和感なし、問題なし?
Forgotten Love
1(LR/LR):特に問題なし
2(LR/RL):低音と中高音がバラバラになってまとまりがない印象に そしてどの音も詰まり気味かつよじれているような窮屈さがあり
3(LR/LL):安定感と生々しさではこれが一番 音像もしっかりしていて芯が通っていて良好
4(LR/RR):妙なディレイ感あり 音像がふわふわして定まらない感じ
5(3極):1分20秒あたりからの低音が響きだすあたりで若干の吐き気に近い感じの違和感の発生あり それ以外は特に問題なし
The Nightfly
1(LR/LR):若干右が軽い印象あり その他は特におかしな印象なし?
2(LR/RL):妙な広がり感あり、ボーカルがセンターにいる感覚がなくふわふわしている
3(LR/LL):鮮明でベスト キレも良いし押し出し感もある 音像もはっきりしていて違和感なし
4(LR/RR):まとまりのない感じ ボーカルに精気がなく、鼻から抜けていくような印象
5(3極):ゆるふわ 何となく鳴ってるという印象 4分15秒あたりからのエレキも詰まってる感じで窮屈
以上の結果からGNDは基板上では導通しているものの、『イヤホン・ヘッドホン出力からドライバーを経由し基板に戻るまで』は独立している模様です。
本来、GNDなのだから同一でなければならないはずで、ここまでの変化があるのはおかしいわけですが、実際に比較試聴して、これだけの違いがありました。
それと意外だったのが5の3極接続の結果です。
ここから考えられるのは『3極接続が気持ち悪い』のではなく『3極3芯接続だと気持ち悪い』音が出てるのではないかな?と
3(LR/LL)、4(LR/RR)の結線での試聴結果にあるように、それぞれ異なる結果の出るものが混合されて長く引き回される結果として違和感ある音になる…のではないかなーと。
3極でもイヤホン・ヘッドホンのドライバーまでを4芯化してあればZX2での違和感軽減の効果はある模様です(もっとも、曲によっては「これはダメだ」っていうのがあるようですが)。
ちなみに1(LR/LR)のケーブルに普通の3極3芯のEX800STを接続した結果は当たり前ですが普通に3極3芯のEX800STを使った時同様に気持ち悪い感じでしたorz
また4芯化加工は一般的な他のプレーヤーでも共通インピーダンスの低下によるクロストーク低減の効果を得られるということで、ZX2用ということでなくても、4芯化加工を行うと音質的には向上するかと。
それともう一点、同じ実験を4極4芯化したCD900STでも行いましたが、ヘッドホンだと今一つ変化がわかりづらい感じでした。イヤホン(EX800ST)の方が違いがはっきりわかりました。
以上のことから、MDR-1AやZ5、Z7などの最近のソニー製ヘッドホンや、元々4芯化されているようなイヤホン・ヘッドホンだと、そもそも3極3芯イヤホン・ヘッドホンで気持ち悪いと言っていた人の感覚は再現されにくいのでわからないだろうということが推測できます。
名古屋のトークショーでは、ZX2は1Aをリファレンス的に作っていたらしい話が出ていましたので、開発者がこの違和感に気が付かなかったとしたら、それはそれでありうる話だと思われ…
orz
そして『GNDなら本来同一であるべき』が破られているわけで、欠陥といえなくもない?とも思います。
本来ならGNDを一点からケーブルを2本引き出してくるとか、そういうアプローチで作られているならわかるんですが、いろいろ公開されている写真やソニービル等で展示されているZX2の基板を見ても、LのGNDとRのGNDのケーブルが引き出されている基板上のポイントは異なります。おそらくこれが影響してしまっている可能性は高いのではないかと。
あと、各曲の試聴メモからですが、もしかしたらRのGNDへ信号を落とした場合、ディレイかかってるんじゃない?という気持ち悪さがあります。
それはさておき、試した内容からは、ZX2ではわざわざ4極化しなくても4芯化されてるイヤホンかヘッドホンを選べばそれなりに違和感ない音で聞けて良いんじゃない?という結果を得られたのは面白かったです。
とはいえ、根本的な解決にはなってないんですがorz
それと、単に3極ならダメなのではなくて3極3芯だとダメなんだというのはひとまず納得できる結果に。
イヤホンやヘッドホンの左右のドライバーへの分岐までを3芯で長く引き回してるものはZX2に合わないようです。イヤホンだと顕著。
逆に言うとZX2のその違和感を独特の良い音だなどと勘違いしている人にとっては4芯化や4極化はその感覚を損なうことになるので、やめた方がよろしいかと。
本来ならZX2の音をイヤホンで聞いていて違和感が…というのは正しいはずなんだけど、違和感ある異常な音を独特の良い音と思い込んでるなら4極化や4芯化はすべきではないかもです。
で。
ちょろっと書いた『GND/Rに落とすとディレイしてない?』って問題。
これ、リモコン添付を想定していたときの4極ジャック流用としての結果で「やっちまったw」だったとしても、意図的にディレイかけてるとしても、いずれにしても『良い音』というものからは外れる要件だと思うんですよ。
ないわー、と。
これももしかしたら以前書いたかもしれない、旧ファミコン(赤白のやつね)にイヤホンジャックを付ける改造で、イヤホンジャックをステレオで組むときに、LかRの片方にコンデンサーとか突っ込んで擬似ステレオだーってやるあれ、ZX2の音ってあれに近いなって思ってたんですが、もしかしたらそういう効果狙ってる?という邪推が、ですね。
もしそういう狙いなら本気でやめてもらいたいなぁ…と。
ZX1の開発思想(『できるだけ色付けのないフラットないい音』)に惚れて、その進化系としてZX2を買ったというのがもちろんあるわけで、CD向けの44.1kHz系のクロック追加とか、再生信号に対して極力余計なことをしないようにしているはずの、本来ならストレートに良い音出るんじゃない?っていうものをイヤホンジャックまわりのそういう余計な設計で台無しにしてやしないか?という心配があるわけです。
心配というか、実際これだけ異様な結果が出てしまっているので、すでに製品として悲しいかな残念って思うわけですが。
長々と書いてきましたが、とりあえず各接続の印象のまとめを。
1(LR/LR):普通に4極化したのと同じ。ある程度すっきりした音
2(LR/RL):音像が安定せず逆相とも言い切れない、気持ち悪い音になる
3(LR/LL):1以上にすっきりした音に聞こえる 一番問題がなさそうだったのがこれ
4(LR/RR):2に近い、ほぼ常時気持ち悪い違和感のある音になる 全体的にディレイ気味?の浮ついた音になる
5(3極):1に近い、それなりにすっきりした音 場合によっては不意打ちで違和感に襲われる恐れあり
以上、こんな感じでした。
…ってことは、素直にLRLRって4極接続するよりも、LもRもGND/Lに落とした方が良いんじゃね?っていう結果が。
もしかしたらRの信号そのものにも若干のディレイがかけられている恐れも無きにしも非ず?っていうか、もうそこまでは見てられない感じ。とりあえずここまでやれば十分かな、と。
ファミコンの擬似ステレオの話を書きましたが、あれ、一聴すると微妙な広がり感があって「良い音だなー」って思いがちな音が出てるっていうのはあるんですが(今のわたしなら絶対却下な音)、要は、そういう風に感じさせるように意図的にやられてるとしたら悪質だなーって気もしなくもないわけです。ZX2を3芯3極で聞いたときの酔うような感じも、人によってはこれを良い音と勘違いしてしまうということもありうるかな?という。
現状のZX2の音がそうやって意図したものではないとして結果的に「やっちゃったw」という音だったとしても、さすがにこれで『音質にこだわった』というのはないよなあ…と言わざるを得ないわけで。
正直残念。
個人的には普通に4極化した音で、もうある程度は満足(というか我慢)できてたりっていうのはあるので、半ば仕方なしに、もうこれでいいやーって使ってるというのはありますが、場合によっては3(LR/LL)のケーブルを常用できるように作って使おうかなあ?とかも考えてます。
それと実験そのものとはあまり関係ない点ですが、CD900STにしろEX800STにしろ、4極4芯化にはMDR-1A用の別売りケーブルを使っていて、4極側のプラグをそのまま使えて便利っていう点から流用していたのですが、今回の実験用にオヤイデのプラグを買ったわけですけど、改めて言う、『ソニーのプラグはやっぱダメだ』、これ、なんでなんだろう(涙)。
変換プラグがソニー製だとことごとく音がおかしくなるっていうのは前にも変換プラグの比較のときに書いたことだし、SDカードでの音質比較のときもなぜかソニー製のSDカードアダプタを使うと他社のSDカードアダプタよりもあきらかに音悪かったっていうのがあったんですが、今回もリケーブルしたEX800STをZX2に直結するよりもストレート変換してオヤイデの4極プラグを付けた変換ケーブルをかました方が音良かったorz
今回使ってる4極ジャック自体は70円程度の、音質的には未知数のものだったんですけどね。
ってことは、面倒くさがってプラグつきのケーブルなので1A用のオプションケーブルを選択してましたが、プラグ取っ払ってオヤイデのプラグに換装した方が幸せになれそうじゃん?っていう。
個人的にはFURUTECHに自作用3.5㎜4極プラグを出して欲しいんですけどね。絶対買うんだけどなあ。
現状の選択肢としてはオヤイデかNOBUNAGA Labsくらいしか選択肢がないんですがこれは?っていう…やるならオヤイデのロジウム版とNOBUNAGA Labsのプラグを使った変換ケーブルをそれぞれ作ってみて、音質比較して良いもの選んで…ってやってみるしかないのかっていう。
今月は、もうむりぽorz
というわけで、ZX2の4極について調べてみました。
ここまで読んでいただいた方はありがとうございます。
個人的にソニーに望むとしたら、プロジェクターとかでやってるような、有償でのリビジョン変更をやってくれるとありがたいんですが。
基板やジャックまわりの交換とかしてくれたらありがたいんですけどねぇ…まともな設計でちゃんとした音になるようにって。
まあ、ないでしょうけど…もしやってくれたらありがたいですねー。
本来なら『気持ち悪くなる音がする』って時点で回収&改修レベルの話だとは思うんですけどね。
いずれもが望めない可能性の高い現状では、どれかしらベターな手を模索して使っていくしかなさそうですね。
| 固定リンク
| コメント (2)
| トラックバック (0)
最近のコメント