NW-ZX1とCDウォークマン・D-NE920を比べてみた
先日ちょろっと触れたNW-ZX1とD-NE920を比較した件、そんなにたいしたことではないんですが、だ日記だと埋もれてしまう部分もあるのでとりあえず分けてみました。
とりあえずこんな環境。
ZX1とD-NE920をCD900STで、ディスクはXLO Test&Burn-In CDを使い、ZX1側ではこれをWAVで転送したものと聞き比べました。
14トラック目の『シャイニー・ストッキングス』で聞き比べてみたんだけど…D-NE920で聞くCDの方が音が気持ちいいです…繊細で緻密かつダイナミック、音場・空気感ともに上。
双方ともに条件を合わせたかったので電源はACから供給で聞いたんですが…バッテリー(D-NE920はeneloop単三型1本)でやっても結果は同じです。
出力自体はZX1が15mW+15mWでNE920が5mW+5mWだからZX1のが上なんですが、ZX1だといまひとつ詰まったような音に聞こえて、NE920のがクリアで澄んで聞こえます。
D-NE920のが、ブラスやドラムスの質感も全然リアル。ZX1だと、差はほんの少しで、多分NE920と比べなきゃ気がつかないレベルだとは思いますが、もんやりとベールの向こうから聞こえてきてる感じです。
ただ、再生のレンジ感に関しては、低域についてはZX1の方に分があるようです。極低域はZX1の方が出ているのですが、NE920はある程度の低域はばっさり落とされています。
DAPの音質としてはZX1は良いのですが…持ち歩くもので利便性も考えなきゃいけないときたら、そういう選択肢の中ではZX1は現状ベターなものではあるのですが、今敢えてCDに戻るという選択肢ならNE920もありなのか…と。
ZX1だとピアノもサックスもNE920のそれと比較して微妙に不鮮明です…NE920だとえらいクリアでダイナミックレンジも大きく取れてる感じで聞こえて気持ちいいのに。
難しいですが、聞き比べしてもらったらほとんどの人が多分D-NE920の音の方を選ぶのではないだろうか?というほどの差はあると思います。
こんなこと書いちゃっていいのかどうかは…比べてそう思ったという個人の感想レベルで一笑に付されてもかまわないんですが、ZX1オーナーでD-NE920を持ってるという条件が狭いのですが、そういう人がいたら試してみていただけると、わたしが書いてることがご理解いただけるかとも思います。
ここで詳細がさほどあきらかではないであろうNE920の内部について考えてみました。
手掛かりはないものか…と、捜してみたら、ありました、NE920のサービスマニュアル。
NE920のブロックダイアグラムを見てみると、音声はボード上のIC603という位置に配置されるSYSTEM CONTROLLERという型番不明のカスタムIC?で1bitのPWMかPDMにして出力されて、NJU8713V-TE2というNJRの1bitスイッチングアンプで増幅してヘッドホン出力されています。
要はソースのPCM信号を素直に1bitの信号としてデジアンに突っ込んでるから音が良いという仕組みなのでしょうか。
対してS-Masterは、ソースを入力段で出力段のクロックに合わせたサンプリングレートコンバーター(ここは仕様不明)でレート変換して、そのあと改良型PWMというC-PLMにして増幅して出力する構成です。
S-Masterの技術資料はこちら…って、ソニーがサイトを再構築してリンク切れしてた…アーカイブ化されたものがあったのでこちらで。
ここでそれぞれの方式についていくつか推測というか妄想を巡らせてみます。
NE920の場合はCDの素の44,1kHz16bitの信号をカスタムICで素直に1bit化して、それをそのまま素直にアンプに入れているので信号の鮮度の劣化が少ない、と。
ZX1の場合はソースがS-Masterに入った時点でサンプリングレートが変換されて、変換された信号が内部でC-PLMになり増幅され出力される、と。
素人的な疑問なのですが、内部のサンプリングレート変換って必要なんだろうか?と思うわけです。S-Masterの説明としては『デジタルオーディオ信号はさまざまなサンプリングレートで記録、作成されたものが存在している。CDの場合は44.1kHz、ハイサンプリングレートの高音質ソースの場合は192kHzの場合もある。そこで、これらのサンプリングレートをアンプ最終段のクロックの周波数に合わせるため、元の信号のサンプリングレートをアンプのクロックに変換する、いわゆるサンプリングレート変換を行う』とありますが、これ、アンプのクロックが非公開なので何とも言えないんですが、要はレート変換を行ってる時点でソースとは異なる信号をアンプで増幅しているわけで、この時点で考え方としてはNE920の素直な出力との大きな差ができていると思われます。いくらサンプリングレート変換の精度においても高くしているとはいえ、整数倍ではない変換を行った時点でソースとの差は大きくなりますし、整数倍変換したとしてもソースの素直な再生からは多少なりとも遠ざかっているわけで。
アンプのクロックを再生するソースのサンプリングレートに瞬時に合わせるということは技術的に難しいんでしょうか?とか思ってしまいます、それができるなら別にサンプリングレートを変換する必要はないわけで。
また、ソニー的にはC-PLMはPWMの改良型という認識なのはわかるんですが、サンプリングレート変換を行わずNE920のような流れで1bit変換を行い、それを1bitアンプに入力する…という設計で音を出したらどうなのか?という部分、そういう設計での音を聴いてみたいとも思いますね。というか、そういうアプローチでZX1並みにアナログにこだわったウォークマンが出たら間違いなくまた買いますね。
そういえば…思い出したように書きますが、デジタルアンプ搭載のDAPでよく話題になる『無音時の『サー』というノイズ』、確かに過去ではKENWOODのHD20GA7からHD30GB9、HD60GD9ECまで聞いていて確かにありましたし、ウォークマンのS-MasterでもA847からA857ではまだかなりありましたし、A867でも低減されたとはいえ多少はあり、そしてF887とZX1でもかなり気にならなくなったとはいえ完全に発生が抑えられたわけではなかったりします。が、デジタルアンプ搭載という意味でならNE920も同様にデジタルアンプ搭載が売りのプレーヤーですが、NE920ではそういうノイズはないんですよね。
NE920のデジタルアンプ搭載の文言が指しているのがNJU8713V-TE2だとするなら、これが相当か相応に優秀で、それ以降の各社開発のデジタルアンプがそれに及ばない…という認識でよろしいのかな?とも思ってしまいます。
理屈よりも何よりも、実際の出音がそれを雄弁に物語ってしまっているので。
なので、実際にZX1とNE920をお持ちの方がいたら、比較試聴してみてもらえると面白いんじゃないか?と思うわけです。
NE920でなくても、D-NE20でも同様の感想を得たとの意見もあるようだったので、そのあたりの時期のソニーのデジタルアンプ採用ポータブルCDプレーヤーと比較してみると、だいたい同じ結果になるのかもしれません。うちにも他にD-NE730があるはずなので捜せばどこかに…と思うんですが、メインをNE920にしてからどこかに片づけてしまってみあたらない(涙)。
見つかれば同様に聞き比べてみたいんだけど、あれはあれで操作にリモコンがないとディスプレイすらない仕様なのですさまじく不便だったりするしリモコン通したらあきらかに音質劣化を起すし。
うちではCD再生時はNE920をメインに使うことにした理由はそのへんです。
以上、長々と書いてきましたが、単純に聞いた感想ではNE920に軍配が上がります。とはいえ、いまどきのデジタルメディアプレーヤーとしてはそれだけじゃない利便性や操作性やストレージサイズも重要なわけで、それらのトータルパッケージとしてのZX1には、ほぼ満足していたりもします。
実際、最近は音楽聞くだけでもほぼZX1がフル稼働だし。問題なのはバッテリー持続時間くらいか…これは本当に何とかして欲しかった。すでによく指摘されてる『背面のデザイン的なふくらみを平らにしてそこにバッテリーを搭載して欲しかった』これは切実にそう思います。実際、先日試してみましたが、音楽再生(MP3で320kbps)を連続で行ってどうかというので9時間で約50%のバッテリー消費だったので、連続使用でおそらく18時間前後でバッテリー切れになるかと…画面操作しながらだとさらに消費が極端に激しくなるので、バッテリーそのものはおそらくF880と共用(電源ラインや保護回路はF880とは別だそうです)だと思われるので、容量の小ささが如何ともしがたい感じで…個人的にはZX1で一番残念なのがPCDPに音質面で敵わないことよりもバッテリー持続時間なので。それとときどきメディアプレーヤーのサービスが暴走してフリーズするのが残念なくらいでしょうか…たぶんデータベースのサービスが暴走してるせいで、リブート後にライブラリ再構築されるのが厄介な感じですが(おかげで『最近追加した曲』にライブラリ内の全曲が上がってきちゃうのが…一応、ファイルを追加した時間軸は読んでくれるようなのでまだいいんだけど)。
ここらは開発者さんたちがトークショーでもくどいほど繰り返していた『このサイズでやり残したことはない』というところが気になるわけで、つまりウォークマンでこのサイズという制約さえなければもっと何とかなったんじゃ?ということです。
さすがにZX1は長く作り続けて欲しいモデルではあるんですが、実際に製品を手にして運用してみていろいろわかってくることもあるので、たとえばPCM-D100を再生専用に特化したモデルにしたものをウォークマンとして出してみるとか、そういうモデルにZX1のアナログ的工夫を混血させてさらに音質特化のプレーヤーに仕上げるとかいった方向性での動きを期待したいな、とは思います。
現時点ではZX1は良いものだし、なんやかや言われていてわたしもPCDPと比較してこんな記事を書いていますが、実際にZX1で音楽を聞いているとそんなこと忘れられるくらい没入できるので、買って後悔しないモデルなのは間違いないと言い切れます。
あとは保護カバーなんですよねぇ…早くどこかがTPUケース出さないかなぁ…バッファローには何度か問い合わせを送ってるんですが、今のところは製品化予定はないとか何とか。今出せば多分独り勝ちできる状況だと思うんですけどねー。バッファローのF880用のTPUケースが良かったので期待してるんですが。早くどこかが出してくれませんかねー。
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