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2010年12月12日 (日)

MDR-EX1000を買ってしばらく経ったのでMDR-EX800ST/MDR-EX600と比べてみた

ようやくMDR-EX1000をじっくり聞きこむ時間ができたので、いろいろ(個人的に)気になる曲とかピックアップしつつMDR-EX800STMDR-EX600聞き比べてみました。具体的な比較は後半で。
試聴環境はNW-A857で、各種エフェクトや音質調整の類はすべてオフで、ボリュームは15程度を基準にしての比較です。
家でPCからノンオーバーサンプリングのDACを経由してHD-1Lでというのも考えたんですが、イヤーレシーバーという製品の性質上、まずは携帯プレーヤーでちゃんと聞けなきゃあまり意味もなさそうだし、あてにならないだろうっていう個人的な考え方からwalkmanでの比較になってます。

まずはMDR-EX1000単体の感想から。
さらっと一聴してすぐに『気持ちいい』といえるイヤーレシーバーだなーと思いました。誰が聞いても、おそらくはどこでも絶賛されてるのがすぐにわかる高音質…ということが達成できているのもすごいことだなぁ、と。一口に高音質と簡単には言えるけれども、それを体現できるのはなかなか難しいんじゃないかと。非常に高い解像感とイヤーレシーバーらしからぬ音場の広さがそういう雰囲気を出しているんだと思われます。バランスは良好、どこかの音域に偏っているということはあまり感じさせませんが、強いて言うなら高域寄りかな?と。レンジもD型らしく広くて、BA機のように上下の桁が詰まったような印象はありません。すっきりと広いレンジ感があります。
まずは 彫りを深く描き出すというよりは淡々と鳴らしている印象なので、味付けされた酔うような(たとえばShure SE530みたいな)高音質の好きな人には向かないかもしれないけれど、プレーヤーなどの上流は素直に反映してくるようなので、そういう意味ではごくフラットだと思われるNW-A840/850系なんかとは相性いいのかな?という気がします。
レスポンスもかなり良好。アタックも締まりもシャープなイメージですが、若干の余韻というか残響が乗る感じはあって、それが広がっていて気持ちいいイメージにつながっているんじゃないかな?と。余韻が乗っているといってもスピード感は非常にあります。比較せず単体で聞く分には、EX1000には向き不向きがあるとはちょっと思えないだろうというくらいの万能さも持っているようですが、ロックやHMなんかだと低音のパンチ不足を感じることはあって、ちょっと軽いかな?という部分も。どちらかというとテクノやロックやポップスよりもオーケストラとかフォークなんかによく合う印象です。
このレベルだと当たり前なんですが鮮明で明瞭、解像感も非常に高くて、練り上げられている印象を感じさせます。
ソースによってはスネアや硬めのドラムやシンバルなんかの刺激的な音や一部のボーカルなんかに硬い癖みたいなものを感じることもあります。ちょっとエッジ効きすぎというか、刺さるまでは言わないにしてもちょっと硬いかな?という…すでに100時間以上は慣らしているうえでの状態なので、もし硬さが取れていないとしたらもっと長いバーンインを必要とするのか、それともこれがEX1000の個性なのか…というところです。通常は100時間もあれば十分だとは思うので、多分個性なんじゃないかなぁ、と。
あと、WAV(無圧縮)とWMA(192Kbps)、MP3(192Kbps)、ATRAC(256Kbps)などでも聞き比べてみましたが、EX1000だと圧縮のざらざら感が…なんてことはなくて、確かに圧縮音源の場合はその窒息感みたいなものを若干感じることはあるんですが、EX1000だから圧縮音源の音楽を聞く気をなくすというほどひどい差を描き出すことはないなと思いました。ついでにいうならWMAの192KbpsとかATRACの256Kbpsなら普段音楽を持ち歩いて聞くのに十分な音質は確保できてるので(この辺は人それぞれでしょうけど…精神衛生上、無圧縮じゃないと嫌だって人もいるでしょうし)、EX1000だから全部無圧縮じゃなきゃダメだなんて極端な感想は持ちませんでした。むしろEX1000だからこそ圧縮音源でも気持ち良く聞ける、というのはあります。それに圧縮音源だからギザギザした音質になるなんてことも経験上ないですね、圧縮されて聴感上で変わるのはその閉塞感・窒息感だったりこもりだったり鮮度や解像感の劣化みたいなのはあるんだけど。なので、音源にこだわらず良く聞けるイヤーレシーバーとしてありです、どんなライブラリを構築されていたとしても買って後悔することはあまりない機種だと思いますね。
装着感は先に購入したEX800ST/EX600同様で、つけているときの感じもまったく同じなので、これ、ブラインドで挿し換えられたら、音出さなかったらどれをつけてるかわからないレベル。音出しちゃうとブラインドでも気がつくくらい個性差がありますけど、それは後半の比較で。
凝ったパッケージや製品についての成り立ちなどの説明が掲載されたプロダクトインフォメーションなんかも読み物として面白いですし、所有欲を満たしてくれる部分でもあります(イヤーレシーバーとしては普段使うときはいちいちその辺取りださないのでわたしは重要視してないんですけどね、要は音質と装着感がすべてじゃないかと)。

それでは比較を。
まずはMDR-EX600との比較から。
実売でもEX1000とEX600だと実売で半額以上の価格差(約43000円前後と約16000円前後)があるから比較するのは酷ではあるんですが、さすがにEX1000を聞いた直後にEX600を聞いてしまうとEX600のレンジの狭さや解像感の低さは否定できないですね。はっきりいって格の違いというのは感じてしまします。
ただ、だからといってEX600がダメかというとそんなことはなかったり。EX600でも値段なり以上の解像感は感じさせてくれますし、それに低音はEX600の方が出ますね、とはいっても強調感はないです。EX1000はEX600よりも軽めの音の印象なので、曲によってはEX600の方が深みを感じることもあります。双方ともバランスはいいですんですが、高域寄りのEX1000・若干低域寄りのEX600という感じです。EX600にあるこもり感みたいなものはEX1000にはないんですが、EX1000だとその分角が立ちすぎて高めのボーカルだとえらいキツい印象になります。EX600だと多少サ行の粗さみたいなものはあるんだけど、全体的に聞きやすく鳴らしてくれます。余韻とか響きの方向性はEX1000/EX600ともに近いんだけど、いわゆるアニソンとか向けなのはEX600のように感じます。対してEX1000はもっとこうオーケストラとかクラシック向けに思いました。バラードやフォークとかもEX1000だといい感じです。以前の銀座ソニービルでの試聴で感じたEX1000の音量の取りづらさというのは、EX1000の音場の広さからくるものだと思いました(もしかすると銀座ソニービルのEX1000が量産モデルじゃないからという可能性もあるけど、それは違うんじゃないか?ってのもあり)。ボーカルや演奏が広く距離感を取って鳴るのがEX1000で、それより近いのがEX600やEX800STなので、そうするとEX600とEX1000では同じ音量ではちょっとEX1000の方がボリュームを上げたくなるわけです。その分EX1000の描き出す空気感みたいなのはいいですね、とはいえ上記にあげたようなくせもあるので、ときどききついなって部分を感じることもあるんですよね。EX1000と上手く付き合うコツは、無闇にボリュームを上げないこと…かな、これ、どんなイヤーレシーバーでも当てはまりそうだけど、EX1000の場合は特に音場感とかの関係でボリューム上げ気味にしたくなるから、気をつけないとダメかも。
個人的にはEX600も好みで選択肢に入れられる良いイヤーレシーバーだと思います。値段も今回のEXシリーズでコード交換可能なものの中では一番手に入れやすいので、ゲーム用途とかアニソン聞くのに狙ってる人にはおすすめできる機種かも。それだけに限らず、普通にオーケストラとかクラシック聴いていても気持ちいいイヤーレシーバーですよ。お金を出せるならEX1000へ行くのも当然ありですが、予算二万円未満ならEX600は買って損しない機種ですね。

そしてMDR-EX800STとEX1000との比較です。
正直な話、解像感は互角だと思うんですよ。若干EX1000のが細やか?と思える部分もあるんですが、EX1000の場合は散々前述しているようにエッジや高域に若干のくせみたいなものも感じるので、そこが解像感を高めに感じさせる部分もあるんじゃないだろうか?というのも…それ抜きで聞いてみてEX800STで聞きとれないディテールがEX1000で聞けているというのはないんですよね。まぁ、わたしが糞耳だろっていわれちゃえばそこまでなんですが(苦笑)。
レスポンスは両方とも良好ですが若干の響きを持たせているように感じるEX1000に対してEX800STのそれはアタックも締めもソースにかっちりあわせて鳴っていると感じました。低音なんかもダレずにしっかり締まります、これはどちらも同じ。
音場はよく言われているようにEX1000が広くてEX800STはそこまで広くはないです、例えるならEX1000はホールの観客席、EX800STはステージ上というイメージ。ただしEX800STが音場を感じられないかというとそんなことは全然なくて、位置感覚だったりはEX800STのはすごいです。像も鮮明。EX1000ももちろんそのあたりは良いんですが、位置関係みたいなものがEX800STとは異なっていてそれぞれが広いという違いを感じました。
きらびやかなEX1000に対して地味な鳴りのEX800STなんですが、ナチュラルさではEX800STに分があるなと思います。好みびいきの部分もあるとは思うんですが、EX1000の鮮度感や響きはちょっと演出がかってるかな?と思える部分はあります。それに対してEX800STの鳴りはひたすら地味なんですが、素直さを感じるのはこっちですね。
高域寄りのEX1000に対して低域寄りのEX800STという音です。特に比較でEX1000からEX800STを聞くと「うぉEX800ST低音盛りすぎw」と思うんですが、いろいろ通しで聞いてみるとバランスがいいのはEX800STなんですよね。刺さったりきつく感じる音がほとんどなくて(もちろん音源次第ではありますが)、ボーカルなんかも落ち着いていているものはそのニュアンスで、元気なものはそのはつらつさで鳴ります。EX1000もそのあたりは同様の部分はあるんですが、ときどきそのきつい部分が耳につくことがあります、サ行とか。EX1000は刺さりづらいとはいえ、きつい部分が無いわけじゃないです…EX800STとの比較だと特に気になる部分ですよ。EX1000で刺さるかもと感じるソースでEX800STではニュアンスを活かしつつ鳴っていてもきついとは感じないですから。
バランスはどちらもいいんですが、より自然に聞こえるのはEX800STですね。ゆえにEX800STのオールマイティっぷりも半端じゃないんですが、用途を考えたら当然かと…。対してEX1000の方は冒頭にも書いてますが一聴して綺麗と感じさせるインパクトのある音なので、普通に高音質の良いイヤーレシーバーを欲しいと思うのなら、普通ならEX1000に手を出しておけば良いんじゃないかなぁというのはあります。EX800STを欲しいというのは、音源に対して気持ちよく聞けるというよりは、もっとストイックにソースに忠実であれといった好みの人じゃない限りは手を出すべきではない…という気もします。
そういった音質からEX800STの音は詰まり気味だったりに感じる人もいるんじゃないかと思うんですが、そういう方向けにEX1000なんじゃないかなぁと…。実際にはEX800STの音が詰まってるってことはないんですけどね。ただ、他と比べてという意味であれば、こもり感・詰まり感といった部分でEX800STに不満を感じる人がいてもおかしくはないなとも思ってはいます。


Mdrex1000ex800stex600
相変わらずいい加減な写真ですみませんが、こんな感じです。
今回のEXシリーズ新作2種プラス1ということで(家庭用ラインナップとしての新作はEX1000とEX600だけでEX800STは一般流通にのってないですから)、ひととおり聞き比べてみた感想は以上となります。
多分に個人的好みもあるので、参考になるかというとどうなんだかなーと書いているわたし自身も思うんですが。ていうかガチで個人的感想なのでこれを購入の参考にするのは危険、人の感想を鵜呑みにしないでできることならまずは試聴してほしいです。それでもより自然に聞きやすく感じたのはEX800STなんですよね。EX1000は良いイヤーレシーバーだし聞いていて気持ちいいし、実際に価格帯での比較でSE530と比べたりしてもこれだったらEX1000を選ぶよって思うんですが、わたしの好みでいうなら地味なんだけど自然な感じがするEX800STの方が良いかなと思いました。
右へならえでEX1000をべた褒めするのもありかなぁ?と思ってもいたんだけど、実際にいろいろ聞き比べてみると、やっぱりそこでは嘘はつけないなぁ、と…。EX1000が高域きつい部分がそれほどでもなくて、もっと自然に素直に聞けるのなら今のところは最高って書いてしまってもいいかなぁと思ったんですが、そうじゃないし。だからといってEX800STが誰にとってもいいのか?というとさにあらず、これもうちで繰り返し書いてることだけど、ひたすら地味なので低音欲しいとか高音の艶がとかいったような個性的な高音質を求めている人には絶対に勧められないし、アンプとかイコライザーとかリケーブルとかで好みの音云々とかする人向けでもないので、そういう場合はEX600なりEX1000なりを買う方が幸せになれるんじゃないだろうかな?というのが、まとめですね。
しつこいですが繰り返すとガチで個人的感想なので、ここ見てEX800STに手を出すのはやめておいた方が無難かと…あれは好みにはまる人なら問題ないけど(わたし自身の趣向が多分に偏ってるというのは自覚してますよ?)、合わない人にはとことん合わないでしょうから、そういう人が手に入れて不本意な方向でEX800STが叩かれても困るし。自己判断できない人に限って、買っちゃってから音場狭いだのつまらない音だのと言い出しそうでイヤなんですよ。本当はそんなことないんですけどねー、EX800STの音はソース次第で音場もしっかり広がるし綺麗にも楽しくも鳴るのでもちろんいいんだけど、単純に気持ちよく聞きたいなら素直にEX600なりEX1000なりへ行った方が幸せになれると思われます。
それと、いずれの機種にしてもコード交換は可能にはなってるけれど、それぞれ専用のコードで使うことを推奨というか、EX1000のケーブルが高品質だからってなんでもかんでもそれに変えるのはおすすめしません。EX600でも同様。バランス崩して残念な結果になるので。これにしても好みの問題と言われてしまえばそれまでなんですが、標準のコードでバランス取られてるというのがそれぞれのコードを入れ替えてみてわかってる結果なので、あえてそれを崩す行為というのは、わたしからしてみればもったいないし無駄なことやってるなっていわざるを得ないんですよね(わたしもやってみてそういうことに気がついたので無駄やらかしたわけですが…)。

そんなこんなでEX1000なんですが、いいイヤーレシーバーであることに違いはないので、絶賛っぷりとその売れ行きにも納得ですよ。取り扱いのある店頭だと、今ではどこへ行っても売り切れだし。実際に月産いくつでどのくらい売れてるのかはわからないし品薄商法で煽ってるのかな?とも思えなくもないですが、いいものなのは確かなので、予算あって買えるなら買って後悔はしないと思われ。
パッケージのプロダクトインフォメーションは読み物として面白いので(大事なことなので二度書きました)、これを読むために買うというのもありかも知れません。


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コメント

>MDR-EX1000を買ってしばらく経ったので
>MDR-EX800ST/MDR-EX600と比べてみた
お疲れ様です! 読み応えたっぷりですね。
上位機種と下位機種の差とか、色々と興味深いです。
私もその楽しみを味わいたく、勢いに任せて
ZX500/300/100を買ってしまいました。
ZX700を含め、眼前に並ぶZXシリーズは壮観ですw

>まずはMDR-EX1000単体の感想から。
5-6kHzにピークがあるらしいので、それが影響して、
エッジのきつさや、ボーカルの硬さに繋がってるのかも…。
この帯域ってちょっとの変化で、印象変わりますよねー。
持ち上げるときつくなるし、落とすとぼやけるし…で。

>そしてMDR-EX800STとEX1000との比較です。
MDR-EX800STは、低音が強かったり、詰まり気味というのが
Z1000と似ているんじゃないか…と思いました。
Z1000は4-6kHzに谷があり、その部分が抑制されてるように
感じてしまうんですよ。
この辺りがモニター用の特徴なんでしょうか。

投稿: plto | 2010年12月13日 (月) 13時29分

pltoさん
どうもです。
今回は上位下位で確かに値段差のようなものもあるんですが、単にそれだけで優劣をつけられるものでもないというのがわかって面白かったです。
EX800STの低音はイヤーレシーバーとして聞くと多めに聞こえる印象ですが、実際の音自体はではどうなの?といった場合に、やっぱりそれなりに低音出てるのでそれで正解かな?ということで、下手にフラットバランスを狙って低音が薄くなってる機種よりは説得力あると思うんですよ。
で、そこらへんは数値やなんかでの調整よりも時間をかけてチューニングされたものの方が完成度は高かったりするのかなー?などというのが個人的な感想だったり。まぁ、EX800STの場合は実際の音云々を含めてもリファレンスが乃木坂スタジオのスピーカーだということで、その特色が濃いのでしょうけれど。

EX1000は確かに聞いていて気持ちいいことが多いイヤーレシーバーなんですが、わたしの場合だと常用するほど好みではなかったという感じなんですよね。実に惜しいというか…個人的な理想の完成型がEX800STで出てしまっていたので、もう当分イヤーレシーバーは買い換えないような気がします。できればEX800STの予備が欲しいくらいなので。

投稿: 釘町阿梨 | 2010年12月14日 (火) 01時49分

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